広島以外ではあまり売っていないかも

大学新入生に薦める101冊の本

大学新入生に薦める101冊の本

どうも、本を選ぶ側の「世界観」が気にかかる本である。
例えば「平和を作る」と「戦争の傷跡」というテーマで、それぞれ5冊ずつ選ばれている。なぜかケインズの一般理論も「平和を作る」に収録されており、バブル崩壊後の日本でケインズ政策が有効でなかったのは「理論の前提となる人間の条件が変わっていたから」とさくっと書いてある(そうなんですか? 教えてエラい人)。
微妙にこの2つのテーマはかぶっているわけだが、戦争に翻弄された一市民の記録、というスタンスの本が多く、なぜ戦争が起きたか分析する本は入っていない。「戦争の傷跡」で「アンネの日記」と「夜と霧」が入っているが、わたしなら「夜と霧」は落として「収容所列島」を入れ、「戦争の傷跡」というテーマも「人類の過ち」に変えたい。
「専門家の終焉」というテーマもあるのだが、この5冊のどこらへんが「専門家の終焉」なのかもよくわからないし、いい加減な世間知で専門家を批判することが許されて良いはずはない。「沈黙の春」や「1984年」は確かに面白い本だが、「環境汚染」や「ファシズムによる情報統制」がそんなに今の日本で深刻に考えるべき問題であろうか。わたしは、1984年だけに「1984年」を読んだクチだが、当時は「政府が自分に都合の悪い過去の発表は、闇に葬ってしまう」というのはホストコンピュータ上のデータベースを改竄する、とリアルに読めたのだが、Internet Archive: Wayback Machineのある御時世にそんなこと言ってもー、というのが今の気分。「現代の重要問題」に一冊も、少子高齢化が出てこないって言うのもなんだかなー、と思う。
この本で掛け値なしに評価できるのは「第五章 本の買い方選び方」だ。本の情報入手先として筆者が薦めているのは、「本好きの人の話」と「ネット書店の読者レビュー」。新聞や雑誌の書評は「ちょうちん」が多くはずれが多い、とのこと。「再販制度」と「委託販売制度」のデメリットを斬るくだりは、快哉を叫びたい。でも「岩波は買い切り制だから岩波を置いてある本屋は立派」というのは、この本の出版元が岩波であることを考えると「ちょうちん」じゃないのか(笑)。本のチェックポイントとして、前書き・後書き・参考文献(自説と対立する文献もちゃんと載っているか)・索引がしっかりしているか調べる、という点も挙げられている。国立大学図書館の構造分析も興味深い。青空文庫に触れたり、オンライン・オフラインの古本屋の利用ガイドも良い。でも外国語文献に慣れる方法として、童話・ミステリー・ポルノというのはちょっと敷居が高くないか? 語彙を制限した本(Oxford Bookworms Libraryとか)の方が良いと思うし、フィクションよりはノンフィクションや専門書の方が楽に読めると思う。

おまけ:

同業者のポイントカードの値引きまで規制したがるってどういうこっちゃ。