東大法学部支配の実害

http://blog.drecom.jp/buu2/archive/23で出ている話題のうち、東大法学部支配の実害について。過去に[財政問題]日本は大きすぎると思うようになったというエントリでも触れたことだが、もう少し追記してみる。なおブウさんご紹介のŒö–±ˆõ§“x‰üŠv‘åjには、以下に指摘する論点はごっそり抜けている。ということ自体が、東大法学部支配の実害だとわたしは思う。

政策立案に対する分析視点が偏ってしまう

法学は、社会を研究対象とする、社会科学の一分野である。社会科学にはいくつもの分野があるが、法学は公平や公正という切り口を持つ分野である。他にもいろいろ切り口はあるのだが、法学部出身者の比率が異常に高い事で、それらの観点がばっさり落ちてしまう。

例えば今年から大幅圧縮された特別配偶者控除であるが、この制度に対する研究者の議論を見ていて、法学者と経済学者でノリが正反対ということに気が付いた。法学系は、育児のために専業主婦を選んだ世帯には恩恵であるということで肯定的。経済学系は、女性の就労を抑制するということで否定的。わたしのものの見方が、理学部は出たものの経済学系なので、法学系の見方に対しては、「本当に低所得だったら控除なんてありがたくないじゃないか。高所得の夫を持つ専業主婦世帯*1に多額の控除をあげてどうすんのさ。」と突っ込みたい。経済学系の切り口は、効率*2である。そして効率の悪い政策は、悪しき副作用を産み、必要以上に金がかかるのだ。

これはぜひお勧めしたいと思う本。女性・中小企業・農家・賃貸住宅生活者等への、「いわゆる弱者保護政策」が、それらが果たして「弱者」とすべきなのか、また結果としていかにそれらを弱者に押しとどめる結果をもたらしたか、経済学の立場から分析した本だ。初めて読んだとき、あまりの怒りに拳が震えた。

とここまでは、経済学的視点。

子どもと出身家庭の強い相関があるという現実を無視している

出身家庭と子どもの成績や学歴には、強い相関がある。詳しい論は以下を参照されたい。

日本の経済格差―所得と資産から考える (岩波新書)

日本の経済格差―所得と資産から考える (岩波新書)

論争・中流崩壊 (中公新書ラクレ)

論争・中流崩壊 (中公新書ラクレ)

このため、東大法学部出身者のバックグラウンドはかなり偏っている。バックグラウンドが偏ったもの同士の閉じた世界の中でキャリアが形成されれば、日本の実情を肌でつかめるわけはない。と、これは社会学的視点。

ただしこの点については、キャリアパスの多様化が実現すれば、少しは緩和されることも考えられる。

[財政問題]日本は大きすぎると思うようになったでハーデスさんから「文系だと頭がいい人は法学部に行く」という反論をいただいたのだけど、東大法学部偏重が、頭が良ければ法学部、という学生の選択の原因だと思う。

*1:ダグラス・有沢の法則と言って、夫の所得が高いほど妻の就労率は下がる。なお、特別配偶者控除が使えないほどの高所得の夫については、極めて少数なので論じない。

*2:その目的のために、それが最適な手段であるかということ。効率イコール金儲けや経済効率と誤解されることが多いが、金儲けや経済効率は、真に効率的ではないことも多い。