JR福知山線脱線事故・関連本その壱

列車ダイヤのひみつ―定時運行のしくみ

列車ダイヤのひみつ―定時運行のしくみ

著者は、JR総研の輸送情報技術研究部運転システム研究室長。ダイヤ作成アルゴリズム畑一筋の研究者。この本の読まれ方はおそらく、4/25以降と以前で180度変わったはずだ。4/25以前は、ダイヤ作成トリビア本として。4/25以降は、脱線事故の原因究明の参考書として読まれるはずだ。
問題の路線は、ダイヤの組み方が無茶だと批判されている。

兵庫県尼崎市脱線事故が起きたJR福知山線の直線区間の制限速度が一昨年のダイヤ改正で、時速100キロから120キロに引き上げられていたことが分かった。快速の停車駅を一つ増やし駅間距離が短くなる一方で所要時間は変更されず、事故現場の急カーブに入る直前には、ブレーキをかけて減速しなければならなくなったという。脱線した快速の運転士は、オーバーランによる遅れを取り戻そうと速度超過の状態でカーブに進入したとみられ、同社が高速化に伴う運転の危険性をどの程度認識していたのかが問題になりそうだ。

ところがこの路線を取り上げて、著者はその精緻さと正確さを激賞している。草津から西明石までのJR京都線神戸線複々線で、これが尼崎駅で宝塚線および東西線と乗り換えられるようになっている。大阪・芦屋・三ノ宮では、同じホームで各停と新快速の乗換えが出来る。東西線にも神戸線にも、下り列車は、宝塚方面行きと西明石方面行きがあり、どちらに乗っても尼崎で同じホームで違う方向行きの列車に乗り換えることができる。
ダイヤを縮める方法として、最高速度を上げることには言及しているが、急ブレーキを掛けて600m以内で止まれるかどうか以外の問題点については触れていない。「遅れないダイヤを作る」という章があって、運転曲線図*1の記述があり、遅れたダイヤを取り戻す方法として余裕時間をダイヤに組み込んでいったり、終点での折り返し時間で吸収したりする方法が書いてあるが、「カーブの直前まで最高速度で突っ込む」とは書いていない。
他にもJRは長距離列車があるので、私鉄に比べてダイヤが組みにくいとか、いろいろ示唆に富む記述がある。

*1:A駅を出たら何秒で時速○kmまで上げる等をグラフで示したもの