調査は徹底させて

鉄道事故の再発防止を求めて―日米英の事故調査制度の研究

鉄道事故の再発防止を求めて―日米英の事故調査制度の研究

信楽高原鉄道事故の遺族が立ち上げた、鉄道安全推進会議による労作。なぜ自分の家族が命を奪われなければならなかったのかという原点から、英米に比べて貧弱な原因究明体制の解消と、遺族に対するサポートを志している。この事故も、JR西日本が関係しているのだが、事故直後からの責任逃れ発言は今回も変わらない。国会にまで責任逃れ発言が問題となり、当時の運輸省が厳しく指導すると誓っているのに。垣間見える組合問題も、今回の事故にもつながっているのだろう。
信楽事故の解説も圧巻だが、NTSBの解説はむしろそれ以上。NTSBは航空事故や鉄道事故について、監督官庁と独立に活動し、調査・勧告・勧告のフォローを行う。処罰する権限も、勧告に従わせる権限もない。だがそれ故に、徹底した調査と調査経過の公表によって、高い権威を誇り、結果として安全を守ると言う特異な組織だ。
「マッハの恐怖」で描かれた1966年春の連続航空機事故あたりと比べると、ここ四半世紀ほどの事故調査の結果には、突っ込みが足りなくて不満が募る。著者らの活動にはエールを送りたい。
それにしても米国で麻薬が原因で起きる鉄道事故の多いこと。70-300という試験を受けたら、「麻薬で操業取り消しになった運転手が、休業中にちゃんと麻薬から足を洗えているかどうか管理するシステムの設計」というお題が出て面食らったことがあるが、米国ではありふれたシステムなのだろう。