お金はやっぱりある方がいい

新入社員の頃。相部屋の寮にいたら、とてつもなく気が滅入った。学生時代も相部屋の寮だったが、ベッドの回りにはカーテンがあって、少しはプライバシーが守れるようになっていたのだが、会社の寮はそうではなくって、非常に気が滅入った。

そこで一人暮らしを始めたのだが、しばらくはひどい貧乏暮らしだった。学生時代の試算結果では、家賃が五万がまともな暮らしができる上限だったのだが、通勤の便と風呂付きという条件では、バブル期の東京ではどこも七万円以上した。当時の法律では女性の残業制限が厳しく、一部の職種を除いては月30時間までしか残業できず、残業代もあまり稼げなかった。わたしの職種は一部の職種に該当するのだが、新入社員は会社の扱いの上では「職種未定の見習」であったため、月30時間までしか残業できなかったのだ。

おかげで最初の一年はひどかった。八百屋の前でしめじを買おうかどうか、ずっと立ち尽くしていたこともある。一番情けなかったのは、給料日の直前に九度近い熱を出したことだ。財布の中は540円、全財産はたいても1000円程度。最低限の食料品を買うのがやっとの金額で、医者に行っても払う金がないし、売薬も買えない。。結局ずっと寝ていた。「美味しんぼ」のセリフではないが、「いつでもトンカツが食える程度の懐具合」は欲しいものだと思った。