預金封鎖ネタとは教科書マンガの資格ナシ

「来月からの新紙幣発行と同時に預金封鎖」というデマが、相当出回っているらしい。預金封鎖で検索したら、以下のページが面白かった。
http://www.toyokeizai.co.jp/mag/kinbi/co/fukumen/co0410.html

預金封鎖論に対しては、次のように反論する。

  • 昭和21年はGHQがやると言ったら何でもできたが、今は国会を通さないと預金封鎖も財産税も実施できない。
  • 昭和21年と2008年では、預金封鎖をした時の国際的な影響が全然違う。2008年にこれやったら、国際的な信用がゼロになること確実。ついでに世界経済がたがた。
  • コンピュータ時代に預金封鎖を実現するには、IT技術者を大量動員する必要がある。秘密裡にコトを運ぶのは不可能。

国債の多くは確かに10年債なのだが、国債というのは10年で元本をそっくり返さなければいけないという性質のものではない。60年がかりで返すものである。詳細は、財務省の次のPDFを参照のこと。http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/saimukanri/2004/saimu02b_01.pdf
で作中では、小渕内閣が借金しまくったことを指摘しているが、今だって借金しまくり状況は変わらないのである。http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014b.htm参照のこと。

わたしの本職はIT技術者で、自治体関係の仕事もしたことがあるが、役所の個人情報データベースの扱いは、このマンガで語るようなズサンなものでは断じてない。役所の持っている個人情報には、収入や税額等、非常にセンシティブなものが多い。このために、役所の持っている個人情報は、部署ごとにきっちり区分されて、他部署のデータに基本的にアクセスできないようになっている。一種のチャイニーズウォールができている。子どもが保育園に通うようになったときに、「なんで世帯税額で保育料が決めるのに、わざわざこっちが源泉徴収票を出さなきゃいけないんだよ、同じ役所なんだからわかるだろ」と思ったものだが、後に自治体の仕事をしたときに、それは素人考えであったことを思い知らされた。

投資のリスク管理と言ったら、まずはhttp://www.nomura.co.jp/terms/ha-gyo/port_riron.htmlとか、機関投資家だったらhttp://www.nomura.co.jp/terms/a/alm.htmlという話になるのだが、そっちの話はまったくナシに終わった。

投資とは、期待収益率と、そこからどれくらいはずれる可能性があるか(これがリスク)を天秤にかけて行うものだ。デイトレードは、手数料を入れると期待収益率がマイナスになる。収益率は、そのままの数字で大小を評価すべきものではなく、物価上昇分を差し引いた数字で評価すべきものである。だからゼロ金利でも、デフレなら実質的にはかなりの金利となる。またトルコの銀行に預金すれば、一年で金額は倍になるが、実質的な金利はほぼゼロである。という話をしなかったことで、教科書マンガとしては完璧に失格。

P.S.
昭和21年の財産税については、 id:newWell:20041020 に詳しい記述がありますので、そちらも参照ください。