財政再計算の内容を評価する(その5)

財政再計算の内容評価シリーズ最終回、被保険者数編。id:sakidatsumono:20041031にコメントされた、とおりすがりさんへのお返事です。

雇用の多様化

これについては、労働者側の都合、雇用側の都合、規制緩和の影響の3つがあると思う。

労働者側の都合

正社員は負荷が高いからパートを選ぶ人もいるし、正社員では専門性を生かせないから派遣を選ぶ人もいる。労働者派遣事業実態調査結果報告を読むと、派遣労働者の職種に対するこだわりの強さがうかがえる。調査結果を見ると、家計の中心になっている人も意外に多い(一人暮らしも多いのだろうけど)。もちろん、なりたくてその雇用形態を選択した人だけではない。昨今の雇用状況の中、背に腹は変えられなくてパートや派遣を選択した人も多い。

雇用側の都合

正社員数を圧縮する動きが盛んである。社員を雇う代わりに、個人事業主に業務委託するケースも増えている。人件費の割合が高いサービス業では、正社員をパートに置き換える動きが盛んで、パート店長も出現している。雇用調整の簡便さもさることながら、社会保険料がかからないのも、これらの雇用形態の魅力である。

規制緩和の影響

以下は、規制改革の経済効果分析概要より作成した年表。

派遣に関する規制
1986年発足。13業務に限定。
1996年26業務に拡大。
1999年対象業務の自由化

年金不信による、未加入の増加

以前のエントリ「雇用保険と厚生年金」(id:sakidatsumono:20040831)にグラフを書いておいたのだが、雇用保険対象事業所は減っていないのに、厚生年金の方は減っている。新規法人の二割近くは、厚生年金に加入していないとのこと。(年金財政の空洞化、悪化進む02年度収支参照)第159回国会厚生労働委員会第9号では、この現象を坂口大臣が以下のように認めている。


一番最初の未納、そして、未納の問題だけではなくて、企業におきます保険料逃れと申しますか、そうしたこともこれは起こっているというお話がございまして、現実問題として存在するんだろうというふうに私も思っております。
労働者サイドにも、年金不信から厚生年金から逃れようとする動きがあるようだ。検索すると、2ちゃんねるの派遣板にこんなスレッドが見つかった。さすがに読みきれない。【社会保険】厚生年金の魔手から逃れたい Part5

年金財政の空洞化、悪化進む02年度収支の最後の委員の発言には、まったく同感である。


厚生年金の被保険者数が減少していることには構造的な要因があると見られ、きちんとした分析が必要だ