401K、意外と役立たず!?

米国における401Kという制度については、1996年ごろ株雑誌で初めて知った。退職金が持ち運べることで人材の流動化をもたらし、税的優遇があることで米国の株高の原動力にもなっているという。退職金が持ち運べるというのには、とにかく大きな衝撃を受けた。会社の選択した枠内とはいえ、運用方法が自分で選択できるというのも魅力的だった。早く日本にもこのような制度が導入されないかと憧れた。

しばらくして、日本株式の低迷のためもあり、日本にも通称日本版401Kこと、確定拠出年金制度が出来た。この時は、制度の詳細までは追っていなかった。わたしの勤め先が極めて保守的であることからして、当面、導入はされないと思われた。しかし意外にも、導入の日がやってきた。

日本版401Kの社内説明会の日、初めてわたしは制度の正確な内容を知った。会社に制度がある場合は、会社が出してくれる分(この会社の場合は月ウン千円)しか、積み立てることはできない。制度の導入には、かなりの教育コストおよび金融機関への手数料がかかるために、中小企業での導入は見込めない。会社をいっぺん退職したら、資産は持ち歩けるが、それはいっぺん解約してから別の口座に移さなければ持ち歩けない。会社を退職し、ハローワークに通ってから次の会社に就職したとすると、退職と共に口座を解約後、個人で作成した別の口座(しかも5000円以上口座費用が掛かる)に資産を移行、就職と共にまた口座を作成、という手間が必要だ。個人で口座を作成する場合は郵便局が手軽だが、企業向けと違って信託報酬等は割高だ。

本来の目的に反して、人材の流動化の妨げが一つ増えただけのような気がする。転職の際に、401Kの口座の扱いをどうするかというよけいな悩みができたからだ。