M.I.Q.原作者を検証する

原作者のサイトの過去ログに目を通してみる。経歴はこちらの最後の方にある。FP(ファイナンシャルプランナー)の資格を持っているそうだ(6/7)。
本屋で資格本を立ち読みしてみたが、株式・転換社債投資信託の基本的な説明もあるし、リスクとリターンの関係、簡単なポートフォリオ理論の説明と、投資の基本はきちんと載っていた。個人向けの資産運用を支援する資格であるためであろう、先物・商品・信用取引・オプションと言った、ハイリスク金融商品に対する記述はなかった。

blogで目を引くのは、3/26の以下の記述である。

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ちょっとした知識と1日に数十分の時間があれば、"3年で倍"や"会社を辞めても食っていける収入"も、充分に可能だということを、理屈ではなく仮想売買という手法で示したいのです。

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仮想売買の結果は、元金100万円で開始した約4ヶ月後の6/29

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●クロパンダの資産状況(2004年3月1日から)
1万1800円x90株(空売り)=106万2000円
106万8837円 (現金)
合計:213万0837円(空売り+現金)
1万1884円06銭x90株(時価で買い戻し)=106万9565.4円
106万1271.6円(時価)

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に終わる。この結果は、たぶん日経平均なりTOPIXとどっこいどっこいじゃないかと思う。
つまり「ちょっとした知識と時間があっても3年で倍はとても無理」だと、原作者自らが示してしまったわけだ。そしてこの日以降、仮想売買の話はblogから姿を消し、7/7発売のマガジンからM.I.Q.の連載が始まる。

さて連載第一回だが、金利複利の話(72を年利で割ると元金が倍になる年数がわかるくらいは、欄外に書いておいてほしかった)や、子ども一人大学にやるのに3000万(たぶんソースはAIUの調査結果)と言ったお金の豆知識と、明らかに間違った数値であるコンビニの利益率、将来消費税が35%に決定という無茶な話(スウェーデンでも26%かそこらだ)の混じった変な話、というのが正直な感想。7/7時点で付いていたコメント欄は溢れ返り、、3日後の7/10には閉鎖された。でもこの時点で、

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ご批判、ご意見に対して、ひとつだけ声を大にして言いたいのは「これからの展開を見ていてくれ!」ということです。ほとんどの(意味のある)ご批判には、今後の数話が答えになっているのではないか、と考えています。

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というので、盆休みまでは静観を決め込むことにした。そりゃマンガだ、最初のツカミが肝心だろう。

ところが連載第3回のコメントが7/21(裏テーマ)である。この回の内容さえ知らなければ素直に読めるだろう。が、「100万円を信用取引で一ヶ月で倍増」のどこが、

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カネもうけ重視とカネ儲け無視(無知?)の二分法から、どうやって納得感のある形で抜け出るのか、という問題への答えを出す

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だというのだろう。黒場は、期待収益率がマイナスであるという理由で、ギャンブルを否定した。なのに、期待収益率がほぼ0の、短期株式投資を解答だと断言。しかも、下手すれば1ヶ月後に元金消滅の上に借金まで残るリスクには触れずじまい。

もちろんマンガはこの後、デイトレード万歳路線で進んでいく。日経新聞は、七月以降、楽天証券への問い合わせが倍増したとか、楽天証券主催セミナーの年齢層が急激に下がったと報じている。マンガの中でも、原作者blogでも、マーケットスピードはたくさん出てくるし、blogには楽天証券へのアフィリエイト付きリンクがいくつも張ってある。楽天証券の繁盛が、「DLJディレクトSFG証券」から「楽天証券」に社名を変えたためだけとは正直思えない。

「ちょっとした知識と時間があっても3年で倍はとても無理」だとわかっていても、「ちょっとした知識と時間があれば3年で倍」路線で突っ走り続けるM.I.Q.。作者は儲かるのかもしれないが。

ほとんどM.I.Q.批判ポータルと化した、
めぞん六星の書斎の部屋
に、管理人である六星さんへの敬意を込めてトラックバックすることにします。

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9/30追記
上記のリンクをクリックしてもリンク切れになる場合がありますがこれは、kuropanda.jpから、3月と5月分の記述が大量に削除されたためです。3月分は、上記に引用した「三年で倍」発言等がカットされています。5月分は、下落相場の中の強気発言や、「統計数字がいいので強気継続」という、株価が景気の先行指標であることを知っている者から見れば噴飯発言が削除されています。ご留意ください。