財政再計算の内容を評価する(その2)

昨日(id:sakidatsumono:20041030)の続き。年金給付削減の原因となった、各ファクタの見積もりミスについて。
(2)出生率については、前回の再計算で使ったH9年推計と、今回の再計算で使われているH14年推計について、将来人口推計の方法と平成9年推計の基本的な考え方国立社会保障・人口問題研究所に簡単な説明がある。出生率については、よほど移民を増やさない限り、現在の中位推計でもまだ甘いと思う。詳細についてはまた後日書くつもり。
(3)老年従属人口指数*1や平均寿命の延びについては、医療・介護関係者の尽力で、日本人が元気で長生きできるようになってよかったね、としかいいようがないと思う。
(4)物価上昇率、(5)賃金上昇率、(6)運用利回りについては、今回の推計については第24回社会保障審議会年金部会資料の資料1-1、資料1-2、資料1-3、資料1-4にある。問題は、以下の二点。

  1. 2032年までしか推計していないのに、この数値をそのまま使って2032年以降も推計を実施していること。
  2. この値は今後の出生率動向に大きく左右される*2ので、更に出生率が低下した場合は、下ぶれすることになる。

(7)被保険者数が前回の推計時の予測を一割近く下回ったということは、約20兆円ある厚生年金保険料収入が、予想より2兆近く低いということだ。被保険者数の低下の要因は、次の2つだと思う。詳細についてはまた後日書くつもり。

  1. 雇用の多様化。
  2. 年金不信による、未加入の増加。

一方、前回の推計と比較して、今回の次の二点は評価したい。

  1. 平成16年年金改正制度に基づく財政見通し等で、さまざまなシナリオに基づいた結果を公表していること。
  2. 世帯(夫婦)所得別の年金額及び所得代替率等で、標準世帯以外の給付について示していること。いまどき、ずっと家事手伝いのまま結婚してずっと専業主婦だなんてまずいない。いろんなタイプを示してくれたことで、うちはいくらくらいとか見当がつきやすい。

こう書いていると、やっぱり年金TFの使命は大きいなと改めて思う。

*1:65歳以上の人口÷15〜65歳の人口

*2:詳細は資料1-3参照