財政再計算の内容を評価する(その4'')

改めて読み返すと、「一部の正社員にしか現在の少子化対策は有効ではない」「保育園は政治的な理由でも増えない」から、「一番の問題は硬直した労働慣行」に持っていくには論理に飛躍がある。この点について以下に補足しようと思う。

スウェーデンは児童福祉に力を入れているし、保育園や保育ママ制度も充実しているが、実は待機児童は非常に多い。フランスも児童福祉に力を入れているが、保育園はほとんどないかなり足りない。米国は児童福祉をほとんどやっていない。これらの国の出生率を日本と比べてみよう(2001年の数字。出典少子化が経済に与える影響等について)。日本よりどこも高い。

スウェーデンフランス米国日本
1.571.902.131.33
米国の場合、労働市場が発達しているために、育児のために一時的に労働ペースを落としたり退職しても、ブランクが長くなければ、さほどハンディがなく適当な労働条件で復職できるとも言われている。労働規制が緩和されていく最近の日本からすると、一つのヒントになるのではと思う。

外国の保育事情を調べると、実は日本の保育事情はさほど悪くない。ではなぜ、日本でことさら待機児が問題になるのか。ここに労働慣行が関係する。外国の場合、一部のエリート層を除けば親の働き方が比較的柔軟なので、保育園に入れないならそれまで休職することも出来るし、ある程度在宅で仕事をこなすこともできる。また保育時間が長くならずに済む(夫の労働時間も短かったり、夫婦で労働時間をシフトすることも多い)ので、預け先も確保しやすい。特に個人に預ける場合、長時間の保育は重労働だし、預かる側の都合も付きにくい(買い物も困る)ので敬遠される。保育園のように施設で預かる場合でも、短時間ならともかく、長時間の質の高い保育を提供するにはコストがかかる。多額の公費補助が入った認可保育園でもなければ、このニーズに対応できない。