これは三連休かけて読み込まねば(前編)

年金の誤解―無責任な年金批判を斬る

年金の誤解―無責任な年金批判を斬る

堀勝洋氏の新刊。主に経済学者からの、年金問題批判に対する反論本。一口に年金問題批判と言っても、「どうでもいい話」や「見当違いの批判」から「まっとうな批判」までが含まれるわけだが、これはそのすべてに答えている。「どうでもいい話」や「見当違いの批判」への返答は、おおむね適切と言えよう。
「まっとうな批判」への返答には変な点も多い。例えば「基礎年金の財源を消費税に」に対して、年齢グループ問題は解決してもコーホート問題の解決にならない、と批判している(P84)。現在の年金が賦課方式である以上、よほどの経済成長下でもない限り、高齢化が進む状況でのコーホート問題を解決する手段はありえない。年齢グループ問題が解決できれば御の字ではなかろうか。第三号被保険者制度に対する批判に対して、同種の制度は海外にもあるが批判はされていない、としているが、海外の類似制度はもっと所得制限がきつかったり、育児期間限定である。今後のこの制度の扱いについては同意できるのだが。
あと著者が法学畑ということで、数字の見方で甘いところがある。例えば年金保険料が、世代によって得になったり損になったりする問題のところで、西沢氏の試算と厚労省試算を並べて書いてある(P52)。堀氏は、西沢氏が負担として労使負担の合計額を挙げていることを問題としている。ところが現在の子ども世代に対する給付額を見ると、厚労省の方が三倍くらい給付額が多い!! 西沢氏と厚労省と、少なくともどちらかが計算間違いをしているのは明白だ。だがこの点についてはまったく触れていない。期間合計特殊出生率コーホート合計特殊出生率の違いがわかっていないと思われる記述もある。
近年の役所サイドからの年金問題批判反論本はあとは、 公的年金の不信・不安・誤解の元凶を斬る!わが国の公的年金制度―その生い立ちと歩み しか知らないのだが、反論の体を為しているとはいえず、買う気になれなかった。ぱらぱらめくって、初めて反論の体を為していると思ったのと、堀氏の今までの仕事を評価しているので、購入を決めた。けっこうちゃんと読むのが大変な本なので、まだ半分くらいしか読んでいない。連休中に読み込まねば。